先週の天理時報4218号にて。紙面5ページの「クローズアップ旬の本」を取り上げたい。布教所長でもあり、脳神経外科医師の方の本が天理時報記者によって紹介されている。私は本書を読んでいないために、本の内容がわからない。しかし、この書評を読む限りは非常にトンデモ本であるようだ。トンデモ本なのか、トンデモ本にしているトンデモ書評なのかは本書を読んで判断してほしい。
本の紹介は3段落目から開始するのだが、その前にある2段落の意味がさっぱり分からない。紹介しよう。
「高止まり傾向の続く自殺者数、ニートと呼ばれる若者たちの増加、相次ぐ児童虐待や凶悪犯罪・・・。
一見すると理解できないような事件・事象が続く現代社会。昨今、当事者や周囲の人々の“心の問題”にスポットを当て、事態の解明や対策を急ぐ気運が高まっている。
本書は・・・(中略)が、長年、治療に当たってきた頭痛やうつ病についてまとめたもの。」
とある。この部分は本書の引用ではないし、この文脈が3段落目(「本書は」)に引き継がれているわけでもない。この記者がどの程度、もの書きとしてのトレーニングを受けているのかは甚だ疑問だが、発行部数17万部のもの書きとしては責任感と国語能力が低すぎではなかろうか。まだある。本書の著者は大学教授まで登りつめた方である。その方が何を書いていようが、書評をするのであれば、その価値を減じてはならないのが最低限のマナーだと思う。嘘をついてまで賞賛する必要もないが、最低でも読者に購読意欲を沸かせなくてはいけないと思う。しかし、この書評を読んで読者はどうだろうか。私は少なくとも「こんな本に金を払う気はないね」と思わされた。そう思ったポイントは以下である。「本編でも、頭痛の中でも見逃されやすい片頭痛や、うつ病が発生するメカニズムと対処法について解説を加えつつ、それらを解決するキーワードとして「耐える、こらえる、踏ん張る」「依存から自立、そして自活」の二つを提示する。」と引用している。しかしこの引用では、非常に誤解を招く恐れがある。詰まるところ、うつ病の人に対して「耐えろ、こらえろ、踏ん張れ、依存するな自立せよ、自活せよ」と言っているに等しいのである。きっと前後の文脈を説明していれば、誤解を招くことはないだろうけど、この書き方はマズイのではないだろうか。もう1つは、本書からの部分的な引用が多すぎるために著者のエピソードの質が軽く扱われている点である。軽く扱われているために、読者にはうんざり感が漂う。というのは、貧しくも心豊かに暮らした少年時代の思い出、高校生のときに父親から「お前、医者にならんか」と言われて医師を目指したことなどである。これがリア充によるリア充の論理に聞こえるのはルサンチマンの私だけだろうか。ちょっと年配の上司が「我々の学生時代なんてね、マージャンばかりしていたよ」というような「めんどくせぇ自伝」を聞かされている倦怠を感じないだろうか。
でも、まぁ著者も本書の冒頭で「一見平和に見える日本社会は、自殺者が世界で八番目に多く、うつ病が増加し、ニートやフリーターによる生産性の低下を招き、虐待の増加などキレやすい社会に移行している」という大概な責任棚上げ論で、ニートやフリーターの方から反論されてもいのではないかと思う。社会学的視点で書き直すのであれば、「一見平和に見える日本社会はやっぱり平和で、うつ病増加は製薬会社の策略で、生産性の低下は労働人口の減少であるが、低賃金で質の高いフリーターが日本の生産性を担保している。虐待の増加は、氷河の一部が情報化で顕在してきている。現在の日本で一番犯罪率が高い(キレやすい)のは60代の男性である」となるだろう。
結論として、天理教の存在意義を際立たせるために現代社会を露骨で恣意的な悲観論へとロジックがすり替えられている。天理時報を天理教とするならば、天理教が率先して悲観を牽引していることは悲しいことである。しかし、あまり悲観的になりすぎてしまうと宗教の意味がなくなってしまう。どんなに社会や人々が悲観的であっても宗教家こそ諦めずに希望を持ってほしい。
「いやいや、こんな日本も捨てたもんじゃないよ」というロジックを天理時報が採用すれば、もっと天理教を信頼する人は増えると思うのだけどな。私は日本に生まれてよかったと思うし、皆一生懸命生きてると思う。色々あるけどそんなに悪くはないし、少しでも良くなってほしいと思うのだけど。天理教の時代は終わったのかな。
1. 無題
この書評の冒頭部分には私も反応しました。ものごとを単純化、矮小化させる書き方はいい加減辞めて頂きたいのですが・・。現実を直視しないでロジックを守っても意味がないでしょうにね。私のもとに「親子の絆が薄れている、犯罪が増えている、こんな社会に誰がした、今こそ宗教が必要」的内容でA4裏表2枚にわたるプリントがとある教会の会長さんから送られてきます。要約すると、上記2行になるんですが・・・
頭痛とうつを一緒に取り上げるのは、中学生と大学生を一緒に論じるようなものかと思います。
あるいは「頭痛とうつと私」だったら買うかもしれない(笑。
2. 無題
最近、批判的な内容が多いためか、あまりレスポンスはよくないです。ということは、このブログを読んでいる人の多くは天理教関係者ってことになりますね。
A4裏表2枚は凄いですね。
「こんな社会に誰がした」と私に聞いていただければ「私ですけどぉ」と応えますけどぉ・・・
中学生と大学生。なるほど。的確なたとえですね。では私は「オトナのような子どもな私」だったら購入します(爆)