お正月に天理教本部でお餅を食べる行事「お節会(おせち)」の社会学的考察  -お節会開催中に土日が入っていれば参加者は増える-

これまでに報告したように、現在天理教の財政に関するデータを収集している。何人かの読者の方にもご協力いただいて、過去1960年以降の「みちのとも」のデータが集まった。まずお礼を申し上げたい。

天理教のデータをいくつか調べていると、興味深いデータがたくさん出てきたので、財政データと合わせて現在、収集と整理をおこなっている。各年のデータを収集し、入力・整理をしなくてはいけないために結構な時間と労力がかかる。主にデータを引用しているものは「天理教統計年鑑」という天理教表統領室調査課が毎年発刊している資料である。大学や主要図書館に置かれているので、誰でも閲覧することができる。
立派な冊子であり、1年間の天理教の動きが量的に把握できる貴重な資料である。これほど詳細にデータを公表しているのには好感が持てる。
当初、私は天理教の財政をテーマに掲げて資料を探したが、他にも多くのテーマが見つかった。財政データは量が多く、解析もなかなか難しい。そこで、データ整理が終わり、公表できるものから順次公表していきたいと思う。(もったいぶって小出しにしているわけではない。大量のデータを処理しているので大変)
今回は、毎年お正月の1月5日〜7日の3日間に天理市の教会本部で開催されている「お節会(おせち)」についての参加人数データである。その中で、統計学的に有意な 差を認めることができたので、考察として報告する。このブログの下部にローデータのエクセルファイルを添付しますので、ご自由にお使いください。

まずはグラフである。グレーの折れ線が開催中の合計参加人数である。ブルーとオレンジの折れ線は、団体と一般の違いと思われる。1956年からのデータである。1956年から1980年までは開催前日には「村方」と言われる「お節会」のプレオープンがあったと思われる。また、現在は1月5日〜7日の3日間の開催がスタンダードだが、以前は8日までの4日間開催されたこともあったようだ。
1990年以降の過去30年を考えると、参加人数は減少が続いている。2014年では78,715人であった。2015年のデータはない。近年でもっとも人数が少なかったのは2011年の70,789人である。興味深いのは、年祭がある年は増加しているが、教祖100年祭の年だけ大きく減少していることである。これは100年祭の開催が約1ヶ月間あったために、団体参加 者が1月の中で分散したためではないかと思われる。まだ全てを提示していないために言い切れないが、100年祭以降の「お節会」の参加人数の減少は、お金や信者数に比べるとそれほど大きな減少とは思えない。これは、イベントとして一定の認識・成功を収めているのではないかと思われる。

お節会参加人数

次に、私が着目したのは「なぜ2011年が最も参加人数が少ないのか」ということである。これは「参加人数が減少の一途をたどっている」という仮説を棄却することになる。この疑問をデータを見ながら検討していると、お節会を開催した曜日が参加人数の大きな因子になっているのではないかと感じた。それは、私自身が「1月5日では仕事が始まっており参加できない」という経験に由来する。つまり「お節会が開催する「曜日」によって、参加人数が大きく変動するのではないかと考えた。ということで、過去の開催日を遡り開催日を平日or土曜日or日曜日に振り分けた。その結果、下記表のように、土日が2日間含まれていると統計学的に有意に参加人数が多いということがわかった(p=.036)。方法は、平日の参加人数vs土日の参加人数のt検定である。ちなみに平日vs土日のどちらか1つでは有意差は検出されなかった。団体参加か一般参加にも有意な差は検出されなかった。
お節会のt検定表

考察
①お節会に参加するためには、参加受付が必要であり、計上された数値は、それほど実態とは離れていないと思われる。
②1990年以降、10年ごとの平均値比較では参加人数は減少している。しかし年祭の実施年は一過的に増加する。
③一般は団体ではなく「一般受付」という枠組みで受付をしたと知り合いに教えてもらったが、何名以上が「団体」受付の対象で、何名以下が「一般」受付の対象なのかという基準はわからなかった。ただ、一般と団体の差は、もともと団体数が多かったが、近年は一般が団体を上回ることもある。
④上記のことから、団体という組織力は低下している代わりに、個人単位(家族などの小単位?)での参加が多いと思われる。(団体数の減少率に比して、個人での減少率は低い)
⑤個人単位での一般参加割合が増加していることに関しては、教会単位での組織力の低下を裏付けることができる。一方で、一般の参加の減少率がさほど低下していないことに関しては「お節会には参加したいけど、団体でいくのは嫌」ということなのだろうか。天理教人はこの現象をどう考えるのか参加していない私には想像ができない。
⑥単純な疑問として、お供え物のお餅が足りなくなったり、余ったりすることはないのだろうか。そういった場合の対応方法が、週刊新聞の天理時報や月刊内部誌の「みちのとも」を探してもどこにもなかった。興味深い。
⑦問い合わせた知り合いの天理教人は「「お節会」は天理教の初詣として、天理教を信仰しない人でも参加しやすいし誘いやすい(においがけしやすい)」と言っていた。天理教信仰者とそうではない者の割合がわかれば、より興味深い数値だったと思う。そのデータは探しても見当たらなかった。
⑧毎年1月5日〜7日に開催することにどのような宗教的意味があるのか分からない。しかし僭越ながら助言させてもらうと、土日に開催した方がイベントとして大成するのではないだろうか。ちなみに来年は火・水・木なので参加人数は少ないだろう(年祭という行事がどう影響するのかは考慮していない)。
⑨「天理時報」の新春1号の次の2号では、お節会に参加した政治家一覧がほぼ毎年掲載されていた。そのデータも興味深かったため、次回にアップしたい。

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追記:このブログで発表する一連のデータは、協力いただいた方からの資料提供と国会図書館の資料で構成している。統計結果を含めて、データの誤記や統計解析の過誤については責任を負いかねます。

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